今日はあんまり書いたことがなかった気がする兄の話です。
年子で育った兄と私
4人兄妹で、年子の兄がいます。
年が近かったのと親が共働きだったため、子供の頃から兄について回って一緒に遊んでもらっていました。
「しいちゃんの100万馬力を見せてみろ! お片付けヨーイドン!」と兄の汚した部屋を全部片付けさせられたり(子供はどうして「ヨーイドン」であんなに頑張ってしまうのでしょう…)、柔道の技をかけられたり、兄のヒミツを母に密告してしばらく口を聞いてもらえなかったり、喧嘩して2人で物置きに立たされたりしながら兄も私も大きくなりました。
小学校低学年くらいで兄の友達も一緒に遊ぶようになると、時には「誰もしいちゃんをいじめるなよ!」とかばってくれることもあったけど、それがいつの間にか「お前もう俺についてくんな!」になり、双子(もしくは舎弟)のように過ごした時代が終わりました。
彼はいま南青山で「韓国旬菜ハル」という韓国料理店を経営しています。
私が世界で1番好きな飲食店です。
脱サラ後アルバイトから始まった兄の東京生活
兄が29歳の頃、群馬での自動車工場での期間限定の仕事を終えて福岡に帰ろうとする兄を「こっちのほうがいろいろ仕事もあるだろうから」と説得して東京に呼び寄せました。
その前の会社員時代に自分に合っていないと感じる仕事を転々としていて、「身体を使う仕事をしながらこの先の人生について考える時間がほしい」と自動車工場での組み立ての仕事を選んだようで、1年間のそれを終えて、また何かを始める心の準備ができたようでした。
私の狭い1人暮らしの部屋に兄が衣装ケースに半分だけ入った荷物を持って越してきて、そこから3ヶ月のあいだ2人暮らしをしました。
同じ屋根の下に暮らすのは12年ぶりのことでした。
小さなソファとシングルのベッドに交代交代で寝て、たまに屋上で酔っ払うまでビールを飲みながらあれこれ話したりもしました。
兄は当面の生活費を工面するため2週間も経たないうちにアルバイトの仕事を始めたのですが、それが「こさり」という韓国料理店でした。
兄は正しかった。韓国旬菜ハルの成長
それから8年以上たった今、兄は今も同じ店で働いています。
6年前に店の名前は「韓国旬菜ハル」に変わり、兄はアルバイトではなく経営者になりました。
奥さんができ、子供ができ、沢山の素敵なお客さんと、一緒に店を支えてくれる心強い従業員さんと出会いました。
アルバイト時代に韓国人のシェフに料理を一から習い、前オーナーが店を手放そうとしているタイミングで買い取る決断をしたのですが、それに対して周りは色々心配したけど、結局兄が正しかった。
ハルは2016年と2017年のミシュランガイドにもビブグルマン(手の届きやすい価格で美味しいお店)として掲載されたりしています。ランチの時間には行列ができたりもします。
私が好きなメニューは、ソルロンタン、海鮮チヂミ、プデチゲ、プルコギ、スンドゥブ、生キムチ、カンジャンケジャン、ああ。書ききれない。家族のひいき目もちょっとはあるけど、何を食べても間違いなく美味しいお店です。
「美味しいものを食べさせること」の喜び
はたから見たらちょっとしたサクセス・ストーリーに見えますが(見えるかな)、この8年間兄はひたすらに地道でした。
「今日の営業の何を後悔しているか」「今日はお客さんがどんな言葉をかけてくれたか」「自分の悪いところは何か」。ランチとディナーの営業を終えたあと、深夜にかかってくる電話はいつもその日の兄の反省会でした。それが何年も何年も続き、電話は少しずつ減っていきました。
兄は少しずつ、着実に経営者らしくなっていきました。愚痴を言わず、過去を後悔せず、未来の話をたくさんするようになりました。
「お客さんに美味しいもの食べさせたい」「来てよかったーって思ってほしい」という言葉だけはずっと変わりませんでした。
私がベルギーに来る前に家族が集まって行ってらっしゃい会をしてくれたのもハルでした。
コロナウイルスの馬鹿野郎
コロナで店がどんな影響を受けているのかは誰にとっても気が滅入る話にしかならなそうので詳しくは書かないことにします。
店と自分と従業員さんの生活を守るため、ようやく返し終わった融資をまた新たに受け、何年がかりで返していかなくてはいけない、というところです。
それを聞いているだけの私でも身を切られるような思いがしたのに、兄は父から「1千万でも2千万でも損する覚悟だけできとったらそれでええ。また振り出しに戻るだけの話やないか」と言われて気持ちが軽くなったのだそうです。「そうか、また最初からやればいいんだ」と思えたのだそうです。
店はまだ通常通り開けていますが、この状況で「お客さんにお店に来てほしい」とは兄も思っていません。テイクアウトやデリバリーでの販売の準備を色々としつつ、コロナの問題が終わった時にどう「お客さんにとって更に良い店になれるか」を考えているみたいです。
私もいま、数年ぶりのSOSの連絡を受けてメニュー作成やオペレーションの準備を手伝っているところです。色々整ったら来週また載せたいと思います。
兄の店のこともあってここ最近ちょっと感傷的になってしまっているかもしれません。誰かに何かを訴えたいわけではないのですが、これをただ書くしか気持ちの行き場がありませんでした。この数年間こんなに頑張ってきた兄が、また大きな責任を抱えなくてはいけないことが身内としてとても辛い。
それでも「もっと店を良くしたい、強くしたい、みんなを守りたい。これが自分がほんとうの経営者になれるかどうかの分岐点だと思う」とただ前向きな兄の姿を、目撃した1人として記録に残しておきたい気がしたのでした。
私も今は自分の勉強や色々はストップしてこれを手伝っています。手伝いながら、私は今後どう生きよう、という考えも頭をよぎります。自分が目指すものに自分の努力だけでは手が届かず、誰かにSOSが出せるほど私は必死に何かをやっているだろうか、とも自分を省みたりします。
でもそれはそれで後から考えることにして、当面はハルのことに集中しようと思います。
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来週からテイクアウト・デリバリーが始まる予定です。
ランチメニュー、ディナーメニュー、コースメニューと内容も様々です。
また、このために外出して頂く必要は全くありません。お近くにお住まいだったり、お仕事されていたりする際は機会があればご検討ください。予約していただいたら店頭でお渡しできるよう準備しておきます。まだ詳細は決まっていませんが、近隣(港区/渋谷区/品川区/新宿区)へはデリバリーも予定しています。
Instagramのアカウントはこちらです。
(実は文章が苦手な兄に代わって、今だけ私が話を聞いて代筆しています)
韓国旬菜 HALU on Instagram: “南青山の韓国料理店🇰🇷、韓国旬菜ハルです。 ご無沙汰しております。もしくは、初めまして。 コロナの影響下、皆様ご無事で安全にお過ごしのことを心よりお祈り申し上げております。 「そういえばあの店はどうしているだろうか」と思い出してくださったお客様、ありがとうございます。…”
韓国旬菜ハルの所在地
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目2−6
長くなりましたが私のセンチメンタルは以上です。
今日も読んでくれて本当にありがとうございます。
勝手に愛を感じてます。
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